前回から引き続き、北欧の旅行中のエピソードについて書いていく。今回はスウェーデンとデンマークでの初のラーメン体験について。

スウェーデン滞在中は毎朝大体同じメニューを食べていた。フルーツヨーグルトにミューズリーを混ぜたものや、雑穀パンやクラッカーに好きな具を乗せたもの。日本にはない食べ物も楽しめて美味しいのだが、徐々に麺や米が恋しくなった。そんな中でコペンハーゲンに散策に行く際、パートナーの妹が美味しいラーメン屋さんがあると教えてくれた。『Slurp Ramen Joint』という。
店内はこぢんまりとしていて、お店のアイキャッチにもなっているサングラスをした犬のネオンが可愛い。それと同時に日本らしいテイストも感じられる内装でとても洒落ている。店名にSlurp(啜る)と入っているのはラーメンを啜って食べる日本独特の習慣を強調するネーミングだろうか。後から知ってびっくりしたのだが、超有名なコペンハーゲンのガストロノミーのレストラン『Noma』の元従業員の方が開いたラーメン屋らしい。
席に着いたらQRコードを読み込んでメニューを見るシステム。私は塩ラーメン、パートナーは醤油ラーメン、パートナーの父はヴィーガンラーメン。そして全員ビールを注文。私自身は日本でもラーメン屋に頻繁に行く訳ではない癖に、味を見極める審査員のような気持ちが何故だか湧いていた。
北欧に来て記念すべき1杯目のラーメンだったので想像を膨らませるだけでもワクワクしていたが、実際に目の前に現れたラーメンはかなり日本らしいのと同時にユニークだった。透き通ったスープ、綺麗に整列して丼の底に沈んでいる細めの麺、桃色のチャーシューに煮卵。その上にホールのピンクペッパーやハーブ(恐らくタイム)がトッピングされていて驚いたが、明らかに美味しそうだった。実際めちゃくちゃ美味しかった。スープも麺も具もどこを取っても繊細で解像度が高い。日本に出店するや否や大行列が出来る様が目に浮かぶようだった。
Slurp Ramen Jointの塩ラーメンは170デンマーク・クローネ=約3000円。北欧では外食でかかる費用が日本よりもお高め。こちらのお店は日本のラーメンの価格帯に置き換えると1500〜2000円くらいのラグジュアリーなラーメン店のイメージに近い
北欧でのラーメン初体験はこんな最高の形で迎えることができた。そしてもう一軒おすすめのラーメン屋があると聞いていた私は滞在の後半にスウェーデンのマルメにある『Ramen to Bíiru(らーめんとビール)』を訪ねた。こちらも店名が最高。
デンマークに何軒かあるラーメン屋で、コペンハーゲン空港の中にも店舗がある。店名にもビールとある通り、『Mikkeller』という東京にも店舗があるデンマークの有名なブルワリーのビールも楽しめる。お昼時で注文する人の列が途切れなかったが、お店はそこそこ広く、テラス席も十分にあったので余裕を持って座ることができた。ここのラーメン屋の雰囲気もとても好みで、私の大好きなバンド・Khruangbinのアルバムが流れていた。
ここではピリ辛の坦々麺を注文。先述のラーメン屋とはまた違い、味も見た目も誰もが想像する坦々麺そのもので濃厚な胡麻の味わいが後を引く。パートナーが注文した味噌ラーメンも同じくド直球な味噌ラーメンで、お互い夢中になって完食した。
こちらのラーメンは145スウェーデン・クローナ=約1900円。低すぎず高すぎない一般的な価格帯だろうか。
滞在中は北欧らしい食事を楽しむ機会も沢山あったが、スタイルの違う2軒のラーメン屋を試すことができたのは実は滞在中の食体験の中でも特に印象的だった。スウェーデンの首都ストックホルムでもラーメンブームの波が来ているらしく、今後はもっとお店の選択肢が増えるかもしれない。北欧の街を歩いていると日本食のレストランをよく見かけたり、スーパーでも日本の食材が多く販売されていたりと日本食の浸透率は想像以上だった。北欧でははっきりとした濃い味付けが好まれる傾向があるようで、そういった点でラーメンは大きなアレンジなしで受け入れられやすい日本食の一つかもしれない。現時点では認知されていないお好み焼き等も、ソースの濃厚な風味や具材の自由度から今後北欧で流行る素質がある気がする。次回また北欧に赴いた時には今回は出会わなかった豚骨系のラーメンや、他の日本食やエスニック料理も試してみたい。
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