このパンデミックが始まる前は、数ヶ月に一度は海外から来日するアーティストのライブに行っていた。チケットを予約してライブ当日が来るまでの間、普段の生活を送りながらライブをご褒美のように楽しみに待っていた。入国制限が解除になった去年の後半辺りになってからまた徐々に洋楽アーティストの来日ライブが増えてきたので、ここ最近は久々にライブに行く機会に恵まれている。大好きな曲を作ったアーティストがはるばる遠くから自分と同じ空間までやってきて演奏をしてくれるということがしみじみ嬉しい。一人でしがむように好きな曲をじっくり聞いているのもいいが、やっと入国制限が解かれた今は改めてライブ会場に赴いて音を浴びることの良さを噛み締めている。
ライブ以外でも、多くのイベントや国内海外問わない移動も解禁される様になった。パンデミックの間は日常が戻ってくるのはいつになるのかと考えていた。歴史に残るパンデミックの流行期間なども調べて、大体2〜3年くらいかな、と予想したりしていた。完全に収束した時には皆でお祝いしたいねと言っていた人もいたけど、分かりやすく目に見えて新型ウイルスが消えるということはなく、非常にぬるっとした感じで街に人が戻っている。マスクと消毒液は携帯することが癖になったが、そのうちマスクをする人が減ったら私もその癖を手放す時が来るかもしれない。
私が生きているうちにこのパンデミックを体験しなかった世代も生まれてくることを思うと、何だか祖父母のイメージに自分が重なる。祖父母が第二次世界大戦中のことを教えてくれた様に、私も「あの時は大変だったよ〜、でも意外と友達とかにも会ってたしそれなりに暮らしてたよ」みたいな話を若い世代に聞かせる時が来るだろうか。今世界中の人々の間で共有しているこの空気感も、時が進んで世代交代が進んでいくことで、また違った空気感に移り変わっていくだろう。
最近よく、パンデミックの始まった2020〜2021年頃のことを思い出す。スーパーに買い物に行くにも人を避けながら歩いたり、不織布マスクが品切れで購入できなくなったり、国から布製マスクが届いたりしていた頃は、今と比べればかなり緊迫した雰囲気があった。そんな中でも、好きなアーティストがオンラインでライブをするのを鑑賞したり、友達とZoomを繋いでオンライン飲み会をしたり、転職をしたり、パートナーと出会って人生で初めて同棲を始めたりもした。祖父母から聞いた第二次世界大戦時のエピソードと同じく、大変な状況になったらなったで人間はそんな中でも歓びを見出そうとするのだということを、状況は違えど身をもって体験した様な気がする。私が運が良かっただけとも言えるが、風邪さえも引かずよく生き延びたと思う。自信をなくすことも自己嫌悪で意識が支配されることも沢山あるけれど、とにかく現時点で体が健康ということは自分にとって誇るに値する事実だ。