『PERFECT DAYS』2023年(日本・ドイツ)
周囲の人から立て続けに同じ映画を勧められることがある。この映画もその一つで、最近Ororaovalメンバーに勧められて見て、大好きな映画の一つになった。余計な脚色はなく、見ていて心地良い。今後落ち着きたい時に見返したいような映画だった。大好きな曲が劇中に流れたことや、主人公の行動が夫の父親にそっくりなことも個人的に刺さったポイントだった。
ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』を思い出したが、ヴィム・ヴェンダースとジム・ジャームッシュの作品の印象が自分の中で被りがちで、たまにどっちがどっちか分からなくなる。ヴィム・ベンダースの映画はいくつかしか見れていないので、これから過去作を追っていこうと決意した。
『対峙』(原題:MASS)2023年(アメリカ)
銃乱射事件の加害者と被害者の両親による対話劇で、以前から気になっていた作品。銃乱射事件を描いた映画としてガス・ヴァン・サントの『エレファント』を見たことがあったが、暴力的なシーンが長く、そういったシーンがどうしても苦手なので見続けるのがきつかった。この映画では事件そのものではなく、遺された家族のその後に焦点が当てられているという点でも、個人的には見るハードルがかなり低くなった。
シンプルな構造ながら、でもだからこそ、少しの俳優の表情の動きや画面構成の変化にも敏感になっていく感覚があり、かなり没入してしまった。会話の節々から登場人物の個々の性格や思い、夫婦間の力関係が徐々に露わになっていくようだった。夫婦意外に出てくる何人かの登場人物も例外ではなく個性が滲み出ていた。監督のフラン・クランツは俳優としてのキャリアが長い中で今作が初監督作品とのことだけど、にわかに信じがたいほど洗練された印象を受けた。見るタイミングを選ぶ映画だけど、映画が好きな人には必ず勧めたい。監督のインタビューでは劇中のシーンや背景に関して言及があり、読み応えがあった。
【単独インタビュー】『対峙』フラン・クランツ監督が示す喪失の闇と一筋の光
『星の王子ニューヨークへ行く』『星の王子ニューヨークへ行く2』(原題:COMING TO AMERICA)1988年、2021年(アメリカ)
先述の二つの映画が精進料理やガストロノミーだとしたらこの映画はステーキプレートみたいだ。エキストラも背景美術もギャグもこれでもか!というほど全部盛りで、何も考えないで見れるコメディー映画だと思い見始めたら、その情報量の多さから見入ってしまった。最近制作された続編も時代に合わせたアップデートが自然と組み込まれ、前作のくだらなさと華美さも全力で引き継がれていた。
人間を幸福にするのは、自分に決定権があり選択肢がある環境だと誰かが言っていた気がするけれど、本当にそうだよな…とゲラゲラ笑いながら思ったりした。