最近、とてもささやかにではあるが大切に思っていた人とお別れをした。
もうお互いに示し合わせて会うこともしないし、連絡も取らないことにした。
しかし、私はもう少し話をしていたかったけど、あちらはそうでもなさそうだったことに自分で思っていた以上にショックを受けてしまった。その日の夜はあまり眠ることができず、次の日の午前中は好きなだけ泣いて過ごした。
そんなことがあったからか、ふと小学生の頃とても仲が良かった友達のことを思い出した。その子を仮に“あきちゃん”と呼ぶことにする。
あきちゃんとは小学校入学当初からご近所同士で、登下校の班が一緒だったことをきっかけに仲良くなった。あきちゃんは引っ込み思案な私と違い、とても活発で聡明な子だった。頭が良くて運動神経が良くて、可愛かった。親からは「あきちゃんを目指したら?」というようなことを言われたのを覚えている。今考えると、これは呪いの言葉だった。そのことについては改めて書く。
あきちゃんとは一緒にゲームをしたり、イラストを描いたり、手紙を交換したり、プリクラを撮ったりしてしょっちゅう遊んでいた。でも、何かにつけて、あきちゃんの方が器用に出来ているのだなと感じていた。メールで喧嘩をしたときは、コピー&ペーストを活用して私よりもずっと長い「バカ」の字の羅列を送ってきた。何をするにしても、私はあきちゃんに敵わなかった。それでも一緒にいて楽しかったし、お互いが一番の親友だと自負していた。
私達は同じ中学校に入学し、同じ女子卓球部に入部した。私とあきちゃんはダブルスを組んで、市の大会で優勝した。しかし、高校受験が近づくにつれ、何となく距離が離れていった。交友関係は続いていたけど、あきちゃんは彼女と同じくらい頭が良くて運動神経が良くて可愛くて聡明な子たちとよく一緒にいるようになっていた。
私達は大抵、共通の友達と3人で下校していた。けれど、私は2人の後ろか前にいることが多かった。途切れ途切れに聞こえる2人の会話を聞いて、曖昧に相槌を打ったり無理に笑ったりしていた時間は、今思うと人生の中でもかなり辛い時間だったように思う。
ある時あきちゃんから、一緒に帰れないので先に帰ってと伝えられたことがあった。私が1人で帰っていると、別の友達と一緒に帰っているあきちゃんを見かけた。「もう親友ではないのかもしれないな」と思って、よく覚えていないけど、帰ってからちょっと泣いたりしたかもしれない。
そして高校進学をきっかけに、私とあきちゃんはぱたりと会わなくなった。志望校はあきちゃんと一緒だったが、私は落ちて、あきちゃんは受かったのだった。
その後、あきちゃんと再会したのは成人式。久々に会った彼女は本当に綺麗で、変わらず元気そうだった。二次会で彼女から話しかけてくれたけど、話したいことは沢山あったはずなのに何故か言葉がうまく出てこず、話もあまり盛り上がることなく、ふわっと別れてそれきりになってしまった。
それでも、たまにあきちゃんのことを思い出す。
あきちゃんは今どこで何をしているのか、
あきちゃんは私のことをこんな風にたまに思い出したりするのだろうか…。
あきちゃんの名前をSNSに探したこともあるけど、見つからなかった。
自分の想いが相手の想いよりも大きいと感じるような出来事があると、決まってあきちゃんのことをセットで思い出してしまう。会えない人は死んだ人と同じ、と何かの歌で聞いたことがある。もう、あきちゃんと会うことはないのかもしれない。それでも、どこかで元気でいてほしい、体に気をつけて無理しないでね、と声には出さずに思ったりする。
今通じ合っていると感じられる人とも、いつか離れてしまうかもしれないという不安が過る時がたまにある。大切だと思っていた人の手を放さなくてはいけなくなった時、心がそれを受け入れるのには長い時間が必要だ。
でもそういう苦い経験も、何かいい感じに、回り回って自分の良さになっていったらいいなと思う。いや、きっとなってくれているはずだ。
あきちゃん元気ですか。
何かの間違いでこの文章をあきちゃんが読んでくれることがあったら、恥ずかしいけど嬉しいよ。いつも憧れていたし一緒に過ごした時間は楽しかった。友達でいてくれてありがとう。あと、私が何か過去に嫌な思いをさせていたら本当にごめん。
たまに、うちにあった栗の木の下であきちゃんが“Video Killed The Radio Star”を上手に歌っていた景色を思い出すよ。
私は今とても元気です。子供の頃想像してた感じとは違うけど、好きな人たちが沢山出来て、今の生活も気に入ってます。
また会えることがあったら色々お喋りしたいよ。
会ってない間にあったこととか色々聞かせてほしい。あの頃よりは上手く会話のキャッチボールが出来るようになったと思う。
こんな世の中だけど、どうか元気でいてね。
今回の一曲
Talking Heads / David Byrne - This Must Be The Place (Naive Melody)
自分の葬式で流したいくらい大好きで大切な曲。
今回は大好きで大切だった人たちのことを書いたので、この曲を。